COLUMN

2025年1月23日

【リテーナーサーチ −機会と可能性の最大化−】

第3回 リテーナーサーチの三つの価値

河本 実里Minori Kawamoto

私たちの仕事の目的は「企業から依頼されたポジションを充足させる」「ご支援した方の転職が決まる」ことではない。「ご紹介した方が活躍して、企業が成長する、企業の経営課題が解決する」「ご支援した方が、より良いキャリアと経験を得ることができる」。それが、私たちの仕事の目的である。
経営者の皆様との対話の中でお聞きする課題やテーマは各社それぞれであるが、それを解決する、実現する一つの手段が外部からの幹部招聘である。

「企業の経営課題の解決や、事業成長に貢献する仕事であるか」
常に自分自身に問いかけながら、私自身は、コンティンジェンシーサーチ(成功報酬サービス)のコンサルタントとして長く活動してきた。クライアント1企業に候補者を紹介して、入社や着任と同時にフィーをいただく成功報酬サービス。自分たちが介在しなければ実現しなかったかもしれない出会い、機会を提供しているという点で私自身はこれもまた素晴らしいサービスだと思っているのだが、このサービスでは提供しきれない価値が一方であるのも現実である。
企業や候補者の皆様と向き合う中で、その成功報酬サービスでは提供しきれない価値をもっと提供できたらとの想いがあり、当時は一部のメンバーのみがやっていたリテーナーサーチにチャレンジしてみることにした。そして、実際にリテーナーサーチにチャレンジする過程で、リテーナーサーチが企業にとって価値あるものだと強く感じるようになった。

ここでは私の考えるリテーナーサーチの三つの価値を紹介したい。



1.一緒に設計図(仮説設定~要件定義)を作る
リテーナーサーチ成功の肝は「仮説設定~要件定義」であると考える。
業界やビジネスのリサーチはもちろん、クライアントとともに、現状や未来像、戦略、課題などを議論し尽くして、今、クライアントが実現したいことや直面している課題を解決するというのはどういうことか、それはどういう人物であればできるのか、その人物はどこにいるのか、「サーチの設計図」を一緒に考えていく。
誰も「正解」がわからない中、クライアントとともに情報、状況をベースに「正解」を作っていくプロセス。仮説設定と要件定義。常に見直しを行い、適宜修正も行いながら、常にクライアントと合意した設計図を持って我々は動いていく。
サーチプロセスの中でも特にここに重きを置いて、このプロセスに徹底的に伴走するというのが弊社のリテーナーサーチの強みの一つであると自負している。

ある時、同僚が担当する案件で、外資リテーナーサーチファームとコンペになったことがある。不振が続く企業の株主から「経営トップとして再建を託す方を探したい」というご依頼。その時点では社名も開示されていなかったが、その業界のことを調べ尽くし、その企業の置かれた状況、経営トップとして対峙するテーマ、それができるであろう候補者属性など、仮説設定と要件定義の類型を提示した。あわせて弊社はこのプロセスを重要視しており、徹底的に仮説設定と要件定義に伴走すると強く押し出した提案。結果、弊社を選んでいただけた。
「なぜ、弊社を選んでくれたのか」という問いに対し、そのクライアントはこう言った。
「他社は、表層的なスキル要件で候補者をリストアップするという会社ばかりだった。しかし実は株主である我々自身も、この苦境を乗り越えるには何が必要で、どういう方が適任なのか正解がわからない。一緒に正解を考えてくれるエージェントに頼みたかった」


2.情報という価値
我々はリテーナーサーチというプロセスを通して、クライアントにとって有益だと思われる情報を収集してお渡しする。また、クライアントと候補者の方とのご面談の場で、双方から発信される情報は、お互いにとって有意義であることも多い。クライアントがリテーナーサーチのプロセスにおいて得られる情報、そのこと自体に価値を感じてくださることもよくある。

私は以前、大手企業が新しい領域に進出するために新会社を設立することになり、そのトップとなる社長をサーチしたことがある。そこで、その領域の多くの有識者(業界団体や類似ビジネスの経営者など)にインタビューを実施した。こういった業界勉強のためのインタビューはリテーナーサーチの初期段階で必ず行うことである。さらに、候補者となり得る方々にお会いして、かなりの件数のインタビューを行った。その業界のプロフェッショナルや、クライアントがこれからやろうとしていることを、すでに別の場所で成した方々から「そのことを実現するには何が肝となるのか、障壁はどういうことなのか」など、ご自身の経験に基づくアドバイスの数々をいただき、得た情報をまとめてレポートとしてクライアントにフィードバックした。
これらはクライアントにとって非常に有益な情報であり、このような情報そのものに対してクライアントが価値を感じてくれることもよくある。

「業界の発展のためなら」「自分の経験が何かの役に立つなら」と、こちらが突然不躾なお願いをしているにも関わらず、弊社からのインタビューを快く引き受けてくださる方は多い。それは本当に感謝すべきことであり、貴重な機会や情報をいただけることに畏れ多い気持ちになる。


3.世界で一番、活躍可能性の高い候補者を探す
成功報酬サービスは、我々の知っている(すでに繋がっている)範囲の中で、適した候補者を紹介するサービスである。スピード感をもってお引き合わせすることが可能だが、我々のネットワーク内に最適な候補者がいることもあればいないこともある。

一方でリテーナーサーチは、私たちが知っている/知らないは一切関係なく、世の中全てから「その仕事ができるのではないか」と思える方々を探してリストアップする。「その仕事ができる人、上位20人に会ってきます」と言い切る同僚もいる。フラットに、ベストofベストを探し求めることができるのがリテーナーサーチである。

前述の仮説設定、要件定義をもとに、クライアントや弊社プロジェクトチームで議論を重ね、候補者を特定し、探していく。弊社にはとても優秀なリサーチャー2が在籍しており、その力量により、到底繋がれないのではと思える方々ともお会いすることができている。
最近も、とある業界のとても著名な方にアプローチすることになり、お手紙やお電話は受け取ってもらえないのではと心配していたが、実際はスムーズにお会いすることができた。弊社のリサーチャーの力によるコンタクトの積み重ねがあってこそ、クライアントと候補者のご縁を結ぶことができる。最近ではそう思うようになった。コンサルタントとしてとてもありがたいことである。



ここまでお伝えしてきた通り、弊社は、人を紹介することそのものだけではなくプロセスを大事にし、プロセス価値に強いこだわりをもって活動している。コラムの2024/11/20掲載回で、リテーナーサーチは3回に分けてフィーをいただくという説明をしたが、これは我々の提供するプロセスそのものにチャージされているという考え方である。
リテーナーサーチのプロジェクトのスタートからクローズまで、クライアントとは時間を多く共有し、チームとしての一体感を醸成しながらともに走り抜ける数ヶ月を経て、その関係性はとても強くなる。リテーナーサーチで支援した企業からはリピートをいただいて、長いお付き合いになることも多い。また、次の採用の際も成功報酬ではなく再びリテーナーサーチを希望されることが多い。それはやはり、リテーナーサーチに価値を感じてくださっている証拠だと思う。

また、リテーナーサーチで出会う候補者との時間も非常に濃密である。そして、形を変えて長くお付き合いしていく間柄となることが多い。ご自身では転職など全く考えていなかったところに我々との出会いがあり、大きくキャリア、人生が変わる機会の提示がなされる。また、この先のことを深く考えるきっかけにもなる。我々に出会ってすぐには転職されなかったとしても、「今後、どういう人生を歩みたいのか、どういうキャリアを構築していくべきか」などを考える上で、ディスカッションパートナーになる。
この仕事はお一人おひとりと、長く形を変えてお付き合いする仕事である。リテーナーサーチの候補者として出会い、その後、企業のカウンターパートとなったり、さまざま相談しあう関係になったりと、出会いからお付き合いが数十年に及ぶこともある。

私自身、リテーナーサーチにチャレンジしようと決め、いくつかのプロジェクトを経験して、
リテーナーサーチは企業に貢献できるサービスであるとの想いをより強くしている。リテーナーサーチの結果、候補者がクライアントに参画して活躍し、クライアントが変革していく場面を多く見てきた。これがこの仕事をしていく中での大きな喜びである。
そして、やればやるほどにさらにその想いは強くなっており、今後も1社でも多くの企業に、弊社のリテーナーサーチでお役に立てたらとの想いで日々、活動している。


次回はそのサーチ活動の要、リサーチャーにバトンを渡して、たっぷりとその価値やパフォーマンスを語ってもらうことにする。

1クライアント:文中においてはリテーナーサーチサービスを発注いただいた企業・企業担当者をクライアントと表現

2リサーチャー:リテーナーサーチサービスにおいて、コンサルタントとともに人材サーチを行う役割の者

執筆者

河本 実里

河本 実里

Minori Kawamoto

新卒で総合商社 兼松株式会社に入社。航空宇宙部に所属し、セールスマーケティング・プロジェクトマネージャーとして、防衛省(航空自衛隊)をクライアントとする米国製航空機ビジネスに従事。契約交渉〜納入まで、数年にも及ぶ長期プロジェクトに主担当として複数回携わる。
07年より株式会社リクルートエージェントにて、企業向け中途採用支援や人材戦略コンサルティング、候補者向けキャリアカウンセリングなどを経験。担当した企業は広範囲に渡り、大手企業からベンチャー企業まで、様々な業界、規模、フェーズの企業の中途採用に貢献。
12年当社参画。コンシューマ業界(消費財、サービス、教育、ネット、小売、流通、エンターテイメント等)やファンド投資先など幅広い分野で、数多くの経営幹部(CXOクラス)のサーチを手がけ、実績を挙げている。
大分県佐伯市出身 九州大学法学部卒業

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