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AIを活用した次世代型「経営戦略」のカタチ

2019年6月4日

それでは経営戦略そのものをAIで導き出せるのでしょうか? 倉橋教授の見解では「それはできない」とのこと。
「少なくとも現状では、そこ(経営戦略の立案)は経営者が行うしかありません。ただ、ビッグデータ解析の結果を基礎情報として活用し、シミュレーションでリスク分析などを行うことで、より精緻な経営戦略が描けるようになったということなのです」(倉橋教授)
もしかすると、将来、利益を最大化させる経営戦略をAIがはじき出すような技術が開発されるかもしれませんが、確実に言えるのは「少なくとも、これから数年、十数年は『AIによるビッグデータ解析→戦略立案→AIによるシミュレーション→実施』という流れが『経営戦略』の立案・実施において理想的なプロセスになる」ということ。ただし、そうなっても根本的に経営者が行うべきことは変わらないのです。

3.経営戦略にAIを活用するために必要なこと

さて、今後、経営戦略の立案や実施にAIを活用するにあたって、経営者はどのようなことを理解し、何を行うべきなのでしょうか?
「当然のことながら、まず経営者には、仮説を立てて、経営戦略をモデル化できるかどうかが問われます。それがなければ、戦略立案に役立つ基礎データがどのようなものなのか? そして、戦略のリスク分析などをするにも、どのようなシミュレーションを行えばよいのかが分かりません。経営戦略という絵が描けなければ、AIをどのように活用すればよいかが見えてこないのです」と倉橋教授は強調します。
資金繰り、需給バランス、人員配置の最適化など――それぞれの予測や分析はAIで可能です。しかし、AIが導き出すものは、結局、経営の中の1つの要素でしかありません。それらを組み合せて、経営戦略を描き、組織をどのように動かすか? という部分は、経営者の手腕にかかっているのです。
また、ビッグデータ解析をするにしても、そこから導き出されるものは「ある一方向から見るとこう見える、ということしか分からない」(倉橋教授)とのこと。それ故、どのような視点で解析するかを明確にし、同じデータについても必要ならば視点を変えて解析を行う指示を出すことが、経営者に求められるシーンなのです。
だからこそ「経営者にはどのようなデータや技術が使えるのか? ということは知っておいていただきたい」と倉橋教授は話し、こう続けます。
「AIによるビッグデータ解析やシミュレーションを、自社内のAIエンジニアが行うにしろ、アウトソーシングするにしろ、経営企画のセクションには、少なくともデータサイエンスを理解している人材が必要だと思います。また、この分野は進化のスピードが速いので、経営者自身が情報収集をできないにしても、そのような人にAIに関する情報についてリサーチさせたいところです。実際、AIを上手に活用できている多くの企業は、年1回開催される人工知能学会の全国大会や関連する研究会に、誰かしらを参加させて情報収集を行っています。繰り返しになりますが、経営者はデータ活用――つまりAI活用の重要性を理解した上で、人材育成なども含めた投資を行っていくべきだと思います」(倉橋教授)
さらにSOMPOホールディングスの楢崎浩一氏や三菱ケミカルホールディングスの岩野和生氏などがよく知られていますが、急激に進化するデジタルテクノロジーを経営戦略に活用するため、ここ数年、日本企業でもCDO(最高デジタル責任者)が増えています。このような役割を担う人材を組織に据えることも、経営戦略にAIをうまく活用するために求められる要素の1つだと言えます。
例えば、SOMPOホールディングスでは、イスラエルのスタートアップ企業との協業で、AIを活用して顧客の健康状態をアドバイスできる仕組みの開発を進める(2019年1月16日付 同社ニュースリリースより)など、AIを活用する取り組みを積極的に進めていますが、そのようなことを実現できるのもCDOの存在があるからこそなのでしょう。

プロフィール
倉橋節也/筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授。主な研究分野は、シミュレーション経営学、経営情報学。大学院修士課程では人工知能とビジネス情報分析などを担当

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