2019年9月26日
また、青木教授は、“攻め”のコーポレート・ガバナンスを実現するうえでは、社長室や経営企画室の役割が非常に重要なことを強調します。
「社内取締役より情報劣位にある社外取締役がきちんと機能するかどうかは、どのような資料を提供するかにかかっている。つまり、社外取締役に渡すアジェンダに何を掲載するかが重要だ。社長室や経営企画室には、『何に対するコメントや議論が会社にとって有益なのか?』を明確にしたうえで、取締役会の議論を活発化させるために必要な情報を提供する姿勢が求められる。必要ならば、できるだけ細かく具体的なところまで提供するのが理想的。また、議論を深めるためには取締役会の回数も多い方が好ましい」(青木教授)
例えば、「コーポレート・ガバナンス白書2019」によれば、任意の指名委員会及び報酬委員会の設置が進んでいるとのことですが、その開催回数は、年に1回という企業が多いようです。そして、その場合「株主総会に上程する取締役の選任議案について経営陣の策定した原案を確認するだけという会社も一定数あると推察される」と記載されています。やはり深い議論を行うにはある程度の回数が必要だと言えそうですが、社外取締役を機能させ、取締役会をクオリティの高い意思決定を行う、実効性がある会議体にするには、十分な時間と情報が求められるのです。
図表113 指名委員会・報酬委員会の設置会社数の推移
指名委員会
報酬委員会
(出所「コーポレート・ガバナンス白書2019」(株式会社東京証券取引所発行)P.107 ※調査対象は東証上場会社)
さて、今後日本企業は「グループ・ガバナンス体制の整備」に取り組むべきだと青木教授は指摘します。
「企業成長につながる“攻め”のコーポレート・ガバナンスという観点でみると、連結ベースでの収益性を高めるためのガバナンスが重要。具体的には、グループ内の子会社への権限委譲の程度やモニタリングの方法を含めたシステムを構築する必要がある。かつては、専業型や関連多角化型の事業構造をもつ企業が多かったため、子会社に対して戦略的意思決定の分権化を図る必要性は低かったが、海外企業の買収などでグローバル化や非関連多角化が進んでいる現在では、子会社への権限委譲は必要不可欠。そうなると与えた権限に対し、どのようにモニタリングするかをデザインすることが求められる」(青木教授)例えば自動車製造だけを行う企業なら、子会社に戦略的な意思決定を分権する必要はありませんが、流通企業が金融業に参入している場合はどうでしょうか? 流通業で実績を積んできた親会社のトップは金融に関しては門外漢。そこで、金融業に携わる子会社の経営は金融に精通した人に任せるのが自然です。それが海外の子会社ならなおさら。予算や事業計画などの裁量権など、ある程度、子会社に権限を委譲しなければ、迅速かつ適切な意思決定を妨げかねないのです。
ただし、権限を委譲するといっても、ほったらかしという状況は好ましくありません。例えば一定の業績基準を決めて、その基準に満たない子会社に経営介入するといったルールを設けるなど、分権化しながらも、子会社の活動をモニタリングする仕組みを構築する必要があるでしょう。
さらに「グループ・ガバナンスによって、適切なコントロールができないと、地球の裏側の子会社で何か不祥事が起きた際、グループ全体のブランドが棄損されてしまう。近年の傾向だと、部品の共通化などが進んでいるため、部品を製造する子会社のトラブルが世界中のサプライチェーンに影響を及ぼすというケースも考えられる」と青木教授はその重要性を強調。つまり、現状、多くの日本企業で手薄になっているグループ・ガバナンスの整備は一刻も早く取り組むべき課題だと言えるのです。
システムやルール作りにあたって、グループ経営における実効的なガバナンスに対応できる取締役を選任して体制を整えることはもちろん、場合によっては社外取締役を登用して不足しているノウハウを補うことが有効なケースもあるでしょう。
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