COLUMN

2024年11月20日

【リテーナーサーチ −機会と可能性の最大化−】

第1回 リテーナーサービスの始まり

この11月から、新しく弊社リテーナーサービスにまつわるコラムをスタートすることになりました。各回で語り手が変わり、それぞれの視点で、弊社のリテーナーサービスと我々の仕事への向き合い方を紹介していきます。

第1回は、リテーナーサービスの始まりについて。

2001年4月、弊社リクルートエグゼクティブエージェントは、外資系ビッグ5と言われるエグゼクティブサーチファーム1やリテーナーサーチファーム2とは異なり、成功報酬のみのサービスを行う純粋なコンティンジェンシーエージェント3として事業を開始した。実は私が前々職であるリテーナーサーチファームに入社したのも同時期の2001年5月であり、その会社の社長から、勉強のためコンペティター4の代表のところに挨拶に行こうと連れて行ってもらったのが、外資系5社中の数社と、弊社リクルートエグゼクティブエージェントであった。つまり前々職の社長は、サービスの形態は違っても、弊社を競合とみなしていたということになる。

それでは、成功報酬とリテーナーの違いは何か。端的に言えば成功報酬型のサービスは、紹介させていただいた候補者の方の入社をもってフィーをお支払いいただくのに対し、リテーナー型は、候補者の採否には関係なく担当コンサルタントをリテインする、つまりは時間を買うという契約になる。外資系大手ファームを例にとると、探しているポジションの想定年収の3分の1を契約時、60日後、120日後の3回に分けて支払うというような契約形態である。

ちなみに弊社の現在のリテーナー契約5は、基本料金を3回に分けて、1回目は着手時にいただき、2回目は特定の候補者の方との2回目の面談の設定をもって、3回目は企業からオファーが出て、候補者が受諾したことをもってとしている。そういう意味では本来のリテーナー6ではなく、2回目と3回目に支払い条件が付いた契約となっている。何故、このような特殊な契約となったのか。それは、私が2010年5月入社後に、それまで存在しなかった新サービスの契約書を作るに際して、議論を重ねた結果ということになる。契約時、60日後、120日後と期間に応じた請求は不可ではないが、その場合は個人としても会社としても収益計上は期間按分すべし。また、顧客が何らかの成果を得たことをもって請求することを一義としたい、という趣旨を反映させたが故である。そもそも120日間ですべての紹介が終わるわけでもなく、日割り計算となると自分の営業リズムも狂う。それであれば、後者のみ反映しよう、という形でできた契約が今の弊社のリテーナー基本契約となっている。尚、この契約書ができあがるまで3ヶ月超の時間を要したことは、今となっては良い思い出である。契約内容を議論している最中は一体どうなることかと思っていたのだが。
期間に応じてではなく、何らかの成果を上げたことで請求するというこの契約が、日系企業にとって受け入れやすく、すこぶる良い評判をいただけることは、その時点で予想できていたことでもある。

もう一つ予想できていたことがある。それは、リクルートのブランドが持つ影響力により、候補者の方とのアポイント取得がスムーズになるだろうということ。当時の社長に、「弊社でリテーナーサービスの立ち上げをやってもらえませんか」と誘われた際、新規事業立ち上げの難しさを懸念しつつも、「リクルートの名のもとでこの仕事に取り組んだら、どのような成果が得られるだろうか」とその可能性にワクワクしたことを今でも鮮明に覚えている。成功報酬の場合は、基本的には、自社データベース、提携先の登録サイト、コンサルタント自身のネットワークという限られた情報源の中での候補者接点になることに対して、リテーナーの場合は、公開情報を元に未接触の方にも積極的に手紙、電話、紹介依頼等々の手法を駆使してコンタクトしていく。つまり、転職意思の有り無しに関わらず、優秀な方にリーチしにいくわけである。それ故に、アポイント取得率の高さは、サービス提供において一定の質と量を担保する上で、とても重要な要因だと考えている。
このように、候補者層の広がりの可能性に成功報酬とリテーナーでは決定的な違いがあり、これはリテーナーサービスの強みのひとつである。
それでは、リテーナーサービスを提案する時、何を確認しているのか。それは、そのポジションに求める企業の意志である。データベースの中にいる方で良いのか、その領域のTOP20に入る方にアプローチしていくのか。その企業が職務機能を果たせる方を求めているのか、将来的な企業価値向上に貢献しうる方を採用したいと考えているのかの意志を確認しながら提案している。

もっとも入社時は、同僚達にとってこの新サービスは馴染みがないものだったかもしれない。言葉がいくつか通じなかったことを鮮明に記憶している。“BD(新規顧客開拓)”という言葉はその典型的な例である。今振り返ると、前々職で自分の専任リサーチャーであった女性が数ヶ月遅れて弊社に参画してくれなかったら、一体どうなっていたのだろうと空恐ろしい気もする。契約書が完成して以降、彼女とひたすらそのBD(新規顧客開拓)を重ね、数ヶ月後に某総合重機大手から海外現地法人社長案件のご依頼を頂き、無事紹介が整うタイミングで、今度は某大手専門店チェーンの常勤監査役案件を端緒にした社外取締役、社外監査役と立て続けに3名の紹介が整った。この頃から、社内でのリテーナーの認知度もかなり上がったと記憶している。
立ち上げ当初は限られたコンサルタントだけでリテーナー案件の対応をしていたが、現在では一部メンバーを除き、可能な限り各自でリテーナー案件に対応している。そしてこのリテーナーサービスを、私の初代リサーチャーをはじめとするリサーチチームが強力にバックアップするサポート体制となっているのだが、このリサーチチームの仕事については、後筆に譲るのでご期待いただきたい。

リテーナーサービス立ち上げから14年。まだまだ弊社のこの領域における知名度、認知度は低いというのが現実である。「リクルートエグゼクティブエージェントもリテーナーをやるのですね」と言われることがいまだ多いと同僚は言う。実際に弊社の売上比率においても成功報酬の方が高いのだが、リテーナー決定実績としては、社外取締役、監査役案件は数限りないと言っても良い状況になりつつあるし、某消費財企業の買収先社長案件や、某製造業大手の品質管理・生産管理責任者案件等々、メディアを賑わすような実績も多くなってきている状況を踏まえ、弊社としてはリテーナーサービスを今まで以上に推進していくことを明確にしている。そして私個人としては、前々職の同僚達が、外資系大手の責任者や中心的存在になったり、独立して自らプレイングマネージャーとして会社を経営したり、大手企業傘下のトップとなって頑張っている状況を見据え、次世代のリテーナーサービス領域における中心的なコンサルタントが弊社内で数多く出現することを願い、それをサポートしつつ、老骨に鞭打つというほど年老いてはいないと思いながら、精進を続けている。

契約書もないまっさらな状態からスタートした弊社のリテーナーサービス。続く第2回では、リテーナーサービスの魅力と価値について、弊社事業責任者にバトンを渡し語っていただきます。

1エグゼクティブサーチファーム:経営層・エグゼクティブ層(社長・取締役、CEO・COO・CFOなどの経営執行責任者、事業部門責任者、社外取締役)に特化した人材紹介会社

2リテーナーサーチファーム:転職意思の有無にかかわらず、要件に最も見合う人材を、自社データベースだけではなく独自のネットワークで探し出し紹介するサービスを提供する人材紹介会社

3コンティンジェンシーエージェント:成功報酬型のサービスを提供する人材紹介会社

4コンペティター:競合

5現在のリテーナー契約:2024年11月現時点のリテーナー契約内容

6本来のリテーナー:「成果の有無に限らず、一定期間の継続的な業務に対し報酬が支払われる契約形態」の意味で使用

執筆者

中村 一正

中村 一正

Kazumasa Nakamura

野村證券で中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事後、外資系生保会社に転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年外資ビッグ5の一角、ハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと一貫してエグゼクティブサーチ業界。
B2C領域を中心に業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。

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