COLUMN

2025年3月13日

【想いを紡ぐ】〜相性、目的、そして条件〜

活躍される方は、面談が進む中で3点の検討が整理されていった方に多い

「初めての転職活動に際して、何かアドバイスを頂けますか」「久しぶりの転職になるのですが気を付けた方が良いことはありますか」と直截的な質問を頂くことは、オンライン面談が増える中で明らかに増加した。対面と違い、ダイレクトな質問がし易いのかもしれない。そういう時に決まってお伝えすることがあるのでご紹介したい。これはこの業界に誘ってくれた前々職の日系リテーナーサーチファームの5年先輩と、新卒で入った証券会社の1年後輩から学んだことを、自分なりに経験を重ねる中で肉付けした考えである。この考えが、転職に関する思考の一助になれば幸甚だ。

最初に確認すべきことは、その求人企業と“相性”は合っていますかということ。この場合の相性というのは、面接でお会いする先方の社長含む役員や社員の方との相性であったり、メディアで語られている社長の言葉であったり、ホームページに記載されている内容から感じられるその会社が大切にしていることであったり、もしくは業界として自分が感じる親和性であったり、企業規模やステージという意味での経験値や、経験値が不足しているのであればそのギャップを乗り越えられるかという判断であったりする。ここはロジカルに考えられることも多々あるけれど、より大切なのは感覚的なものと認識している。従って本人しか知り得ないことでもある。

次にちゃんと確認すべきことは、“目的”に合っていますか、ということ。それは当該企業が求める求人情報の条件としてのみならず、そのポジションに求める役割を経営計画や経営課題という大きな視点から考えても良いし、より専門的な職責の場合はどのレベルでの仕事を遂行することが求められているかをちゃんと理解するとともに、貴方の経験や能力、そして何より意欲を満たしていますかという意味で、目的に添っているかということを考える。そして貴方自身はその転職で、そのポジションで、その職責を果たすことは当然のことながら、加えて貴方自身がやりたい仕事が出来るだけの権限や役割を企業は用意してくれていますか、ということを確認する。

そして最後に確認すべきことが“条件”は合っていますかということ。得てして経済的条件を先に仕事を探しがちだが、それ以前に上記2つの“相性・目的”をクリアした上で、最後に条件詳細を詰めていくべきだと私は考えている。もっとも最初から全く条件(報酬水準など)が合っていないような際は、上記2つの検討以前の問題でもあるので、“条件・相性・目的”の順ではと問い返されることもある。しかしマストな条件はクリアした上で、やはり“相性・目的・条件”の順に詰めていく方が結果的には良い転職になると、少なくとも私の経験値はそう言っている。

ちなみにこの場合の条件に関しても、初年度単年の報酬にばかり目が行きがちだが、成果を出せば報酬は上がるのか、役職定年や定年再雇用は制度としてどうなっているのか等々も確認すべきだ。そして報酬を下げてでも自分がやりたい仕事につければという方には、持ち家であれば住宅ローンの返済額を、お子さんがいらっしゃれば学費を、十分考慮した上で、そもそもキャッシュフローが回らないような転職にはならないようにと注意喚起をさせていただいている。仕事も大切だが、日々の生活基盤を整えることも大切だということを忘れてはいけない。

ただし期間を区切って経営を託されるポジションだと、優先度が違ってくる。事業への思い入れ、つまりは相性よりも目的を達成しうるか否か、そしてそれに対して相応の対価を頂けるかを確認することがより重要である。

思い返してみると、転職後に思い悩む人は、確認すべきことが確認できていなかったが故とも言えるし、転職後にズバッとハマって活躍される方は、上記の検討項目が、面談が進む中で整理されていった方に多いようにも記憶している。

私も当然の如く全て完璧な紹介ができるわけではなく、短期で離職され、候補者の方と企業の双方にご迷惑をおかけしたことも何度もある。けれど、その際には必ず上記の3点の中に原因があり、それを事前に察知し解消できていないか、もしくは、そもそも話を進めるべきではなかったという反省を必ず行い、その後に活かすべく心がけている。正しい例えではないとは思いつつ、プロ野球の野村監督の言葉にある「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」だ。

そしてここまで言ってきてちゃぶ台返しではないが、上記は相応のポジションで迎えられる経営層や管理職の求人と求職者に関する記述である。若い頃の転職は、無茶は絶対してはいけないとは思いつつも、経験のない業界に飛び込むなど新たな挑戦をしないとキャリアが広がらないのも事実だ。そこは私や弊社のメンバーではなく、リクルートエージェントで第二新卒からマネージャーまでの転職のサポートをしているメンバーに極意を聞いてみたいと思っている。私自身の転職は紹介会社を通じたものではなく、昔の仕事仲間からの誘いであったとは言え、39歳で金融業界のセールスマネージャー・トレーナーの世界からエグゼクティブサーチの世界に転じて、四半世紀近くもこの仕事をしている。まさにその39歳の転職はかなり無理があったと今になっては思うが、一方で続けられているその理由も上記の3点で説明が出来るというのも事実だ。

ということで、過去の自分のキャリアをこの3点で振り返ってみると、いざ転職活動をしようとした際に情報や感覚の整理が早く進むかもしれない。一度試されてみては如何だろうか。

執筆者

中村 一正

中村 一正

Kazumasa Nakamura

野村證券で中堅企業営業及び社員研修の企画運営に従事後、外資系生保会社に転じ、組織拡大と生産性向上に尽力。退職時は同社最大の直販部隊のヘッド。
2001年以降、日系大手サーチファームである縄文アソシエイツ、2008年外資ビッグ5の一角、ハイドリック&ストラグルズ、2010年5月よりリクルートエグゼクティブエージェントと一貫してエグゼクティブサーチ業界。
B2C領域を中心に業種的にも、また企業ステージとしても日本を代表する著名大企業から、オーナー系成長企業、未公開新興企業等々、広範囲に対応。

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