2019年1月29日
円谷 昭一
「コーポレート・ガバナンス(corporate governance、企業統治)」という言葉を経済メディアで目にすることが多くなりました。
私の調べでは、2018年の日本経済新聞朝刊の記事で、「コーポレート・ガバナンス」というキーワードが入ったものが562件ありました。
平均すれば1日1回以上も同キーワードが使われていることになり、コーポレート・ガバナンス全盛の時代が来ていると言っても過言ではないでしょう。
そもそも、コーポレート・ガバナンスとはどのようなものでしょうか?
その定義は識者によってさまざまですが、差し当たって次の文を引用します。
企業経営を常時監視しつつ、必要に応じて経営体制の刷新を行い、それによって不良企業の発生を防止していくためのメカニズムである。また、こうした防衛的な意味での監視を超え、企業としてパフォーマンス向上を実現していくために経営陣を選び、動機付けていくための仕組みでもある
ーー田村達也『コーポレート・ガバナンス 日本企業再生への道』中公新書,2002年2月(6頁).
“経営監視の役割”と“業績向上の役割”のどちらを重視するかは論者によって意見が異なりますが、この2つの役割をうまく達成するための仕組みを「コーポレート・ガバナンス」と呼びます。
具体的には、独立社外役員の選任、業績連動報酬の導入、経営トップの選解任の透明化、株主との対話の充実などといった、さまざまな要素が総体となってコーポレート・ガバナンスという仕組みを形作っています。
この数年、国内ではさまざまなコーポレート・ガバナンスをめぐる改革が進んできました。具体的には、コーポレートガバナンス・コードの改訂、フェア・ディスクロージャー・ルールの導入、有価証券報告書の開示内容の改訂、監査上の重要な事項(Key Audit Matters: KAM)の導入などです。
にもかかわらず、ACGA公表の『CG Watch 2018』におけるアジア内でのランキングは、むしろ低下するという結果になりました。
コーポレート・ガバナンス改革が進められた背景にあるのは、日本のコーポレート・ガバナンスの特殊性への批判があったと私は思っています。
これは“良い悪い”の問題ではなく、あくまでも客観的に世界と比べてみて特殊性がある、という意味です。
たとえば、社内者によって占められている取締役会、買収防衛策の導入企業の多さ、親子上場企業や政策保有株式の存在などが挙げられます。
昨今、日本の主要企業の海外進出は一層進み、日経225の構成企業の海外売上高比率が50%を超え、さらに資本の移動もグローバル化して外国人株主比率が40%近くにまで増えている中で、海外機関投資家を中心にコーポレート・ガバナンスにも世界水準を求める声が高まってきていました。
さらに、相次ぐ企業不祥事やROE(自己資本利益率)に代表される日本企業の資本生産性の相対的な低さが浮き彫りになり、「日本企業の収益性が悪いのはガバナンスが悪いからだ」という世界の声に、日本は抗しきれなくなっていたと言えるでしょう。
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