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注目が高まる「コーポレート・ガバナンス」
━━ますます重視される社外取締役

2019年1月29日

円谷 昭一

また、経営陣の報酬も固定給が中心であり、こうしたガバナンス体制が日本企業の改革の足枷となり、世界の変化のスピードから取り残されているという批判も高まっていました。

こうした背景から、社外取締役について言えば、会社法の改正や証券取引所規則の改正、コーポレートガバナンス・コードの導入などによって、上場会社に社外取締役の選任を促すための施策が矢継ぎ早に打たれました。

その結果、東証1部上場会社のうち、独立社外取締役を2名以上選任している比率は(ガバナンス・コード導入前の)2014年が21.5%であったのに対し、2018年には91.3%にまで達しています。

しかしながら、現行の会社法では社外取締役の選任は義務ではなく、証券取引所の規則やコーポレートガバナンス・コードでも選任を強く促してはいるものの義務とまではしていません。
したがって、現時点では社外取締役を1人も選任しなくとも法令等に抵触することはなく、実際に1人も選任していない企業が(ごく少数ではありますが)存在しています。

このように強制法規でない点が問題となったからか、『CG Watch 2018』ではCG rulesという項目で、アジア諸国の平均点が60点であるのに対し、日本は47点に留まっています。

こうした点は規制当局も意識しているようで、日本経済新聞(2018年12月28日電子版)によれば、法制審議会の会社法部会がまとめた会社法改正の要綱案では、上場会社を含めた大会社を対象に社外取締役の設置を義務づけることなどが柱として盛り込まれています。2019年の通常国会に改正案が提出され、2020年に施行されるとのことです。

あくまで私見ではありますが、もし会社法の中で社外取締役の設置が義務化された場合には、証券取引所の規則やコーポレートガバナンス・コードの中でも社外取締役の選任の義務化の議論が出てくると思われます。

2019年は、そうした「制度改正の動向」を注視しておく必要があるでしょう。

重視される社外取締役のスキル

前章で触れた通り、上場会社の社外取締役の人数は確実に増えてきており、今後の論点は“数”から“質”へと移っていくでしょう。
つまり、質の高い社外取締役をしっかりと確保できるかどうかが、上場会社の経営者にとって極めて重要な点となります。 そもそも「社外取締役の“質”とは何か」を明らかにしなければなりませんが、私はそれを“スキル”だと考えています。

日本では、社外取締役の個々人に高い平均能力を求める風潮がありますが、米国では、各取締役がそれぞれ特定のスキルに秀でており、それを持ち寄ることで取締役会全体としてバランスよく高いスキルが保たれることが重視されているからです。

実際に、「スキル・マトリクス」または「スキル・ダイバシティ」と呼ばれる、次のような表によって各取締役がどのようなスキルを保有しているかを開示する米国企業は少なくありません。

スキル・パーソナリティ \ 取締役 A氏 B氏 C氏 D氏 E氏
財務・会計  
金融    
CEOの経験    
グローバルビジネス    
法務      
テクノロジー        
ジェンダー      
人種・民族    
スキル・
パーソナリティ
\ 取締役
A氏 B氏 C氏
財務・会計  
金融  
CEOの経験    
グローバルビジネス  
法務  
テクノロジー      
ジェンダー    
人種・民族  
スキル・
パーソナリティ
\ 取締役
D氏 E氏
財務・会計
金融  
CEOの経験
グローバルビジネス  
法務    
テクノロジー  
ジェンダー  
人種・民族  

出典:各社の開示資料を参考に円谷研究室にて
作成したイメージ

この表はあくまでも例で、各社によって採用されているスキルも異なり、必ずしも表形式で開示していない企業もありますが、米国企業では取締役会全体の能力のバランスを重視し、それに関する情報開示も充実しています。

なお、米国企業では採用されているスキル項目は各社で異なっていますが、その中でも「財務・会計」「技術」「経営経験」「法務・リスク管理」「国際経験」の5項目は多くの企業で採用(重視)されている項目であり、日本においても今後はこうしたスキルを持つことが社外取締役の要件となってくる可能性があります。

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