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人材マネジメントの新潮流~ノーレイティング

2019年7月29日

1.ノーレイティングとは何か?

「『ノーレイティング』とは、言葉としては、人事評価における“S‐A‐B‐C‐D”のような『格付け(レイティング)』を廃止することを指しますが、その本質は、企業が現場のマネージャーに対して、『レイティングに頼らずに、部下を観察し、フィードバックを与え、モチベーションや能力を高めること』を求めているということ。これまで格付けによる評価制度に頼ってきた弊害があらわれてきたので、格付けそのものをなくしてしまおうという、改革なのです」
今回、お話を伺った、学習院大学経済学部経営学科の守島基博教授は、現在、人事管理の新しい仕組みとして注目を集めている「ノーレイティング」について、このように説明します。
「格付けによる評価制度」とは、わが国の多くの企業において、成果主義の普及と共に「目標管理制度(MBO)」が入ってきたころから広がりました。成果主義が入ってくるまでの「職能資格制度」が採用されていた時代の日本企業では、現場のマネージャーが部下とコミュニケーションをとりながら関係性を築いていました。しかし、MBOが普及したことで、それを行うことが難しくなってしまったと守島教授は指摘します。
「MBOは、半年や1年といったサイクルで人事評価を行っていきます。そして、評価結果は目標の達成度合いに応じて厳しく管理される。その結果、上司が部下と関係を築くことが難しくなってしまったのです。例えば、ある人が“B”評価を受けたとしましょう。本来であれば、現場のマネージャーは『なぜこの人は“A”でなく、“B”という評価になってしまったのか?』ということを考えて、次期の評価を上げるための支援を行うべきです。しかし、現実は、“B”評価という結果を、定期的に人事部に報告して終わり━━。厳格に格付け・評価するという側面だけが強調された結果、元々は目標を管理し、能力やモチベーションを高めるためのものであったMBOが形骸化してしまいました。そのため、形式的な評価の元凶になっている『格付け』をやめることで、現場のマネージャーに本来の仕事をしてもらおうということなのです」

2.「ノーレイティング」の目的は“評価”ではなく“人材活用”

しかし、「ノーレイティング」は、格付けをしないからといって、人事評価そのものをやめてしまうわけではありません。特に評価期間を設定せず、目標管理や人事評価、そして目標を達成するためのサポートをマネージャーが日常的に行う改革なのです。
「目標達成度合いに対するフィードバックがタイムリーになることで、部下のモチベーションや能力が上がり、最終的には効率的な人材活用が可能になります。また、1年や半期という評価期間では、一層スピード感が求められるようになったビジネスの変化に追いつけないといったMBOの課題も解消できるのです」(守島教授)
具体的には、毎月あるいは毎週など定期的に、現場のマネージャーが部下とコミュニケーションをとる「1on1ミーティング」を行い、目標や業務の進捗を管理していきます。そのため、確かに「ノーレイティング」は評価システムの一種なのですが、取り組む際には「マネージャーと部下の関係性が良好である」という条件を忘れてはいけません。決して、人事評価を変えればよいというわけではないのです。
「『1on1ミーティング』によって、人材育成に成功している企業として知られるヤフーの取り組みで興味深いのは、部下がミーティングの内容に納得したと承認しなければ、マネージャーはそのミーティングから解放されないという点。これは上司と部下の関係という観点から見ると非常に優れたやり方だと思います」(守島教授)

3.「ノーレイティング」導入のメリット

それでは、ここであらためて「ノーレイティング」を導入するメリットをまとめておきましょう。

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