report

企業成長につながる“攻め”のコーポレート・ガバナンスとは?

2019年9月26日

1.日本のコーポレート・ガバナンスの現状について

「近年の傾向として確実にいえるのは、機関投資家の積極的な議決権行使が経営に大きな影響を与えるようになっているということ。特に今年は、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラス・ルイスといった議決権行使助言会社の影響で、女性役員の登用など取締役会のダイバーシティを重視する方向に機関投資家が動き、企業はそれに対応せざるを得ないという状況が顕著になっている」
コーポレート・ガバナンスが経営戦略に与える影響を研究している中央大学総合政策学部の青木英孝教授は、今年度の株主総会を振り返り、こう話します。
そして、「スチュワードシップコードによって機関投資家が企業の長期的な価値の向上にコミットするようになり、会社法改正やコーポレートガバナンス・コードの導入によって機関設計や取締役会構成の見直しなどのガバナンス改革が進んでいる」と評価する一方、「現時点では、トップ・マネジメントの組織構造が整備された段階に過ぎず、今後はこの新しい意思決定構造を活用して、事業ポートフォリオの再編や投資が活発化し、最終的には企業パフォーマンスの向上につなげていくことが重要だ」と指摘します。

2.なぜコーポレート・ガバナンスの強化が企業成長につながるのか?

アベノミクスの成長戦略の一環として推進されてきたコーポレート・ガバナンス改革ですが、一般的にコーポレート・ガバナンスというと企業の不正防止や経営体制の監視強化といった“守り”のイメージが強いかもしれません。
なぜコーポレート・ガバナンス改革が成長戦略になるのか? 青木教授によれば「社外取締役などの登用により、社外の目を入れることが、企業の戦略的意思決定のクオリティを上げることにつながるから」ということです。同じ会社で同じようなキャリアを積んできた人たちが役員になって何かを決めるとなると確かに事はスムーズに進むかもしれません。しかし、同質的な人だけの集団より、多様性がある集団の方が意思決定のクオリティが高い━━という研究結果もあるように、やはり異質性を入れた方が、議論も深まりますし、新たな気づきや示唆をもたらすことが期待できます。
とはいえ、意思決定のクオリティを上げるためには、単純に組織をオープンにすればよいわけではありません。コーポレート・ガバナンスの仕組みを自社の事業構造や雇用制度などとフィットさせることが必要で、社外取締役を選ぶならば、自社の経営戦略を明確にしたうえで、どのような専門家にどのような役割を期待するのかを考える必要があるのです。
なお、このような考え方は徐々に浸透しているようで、実際、社外取締役に専門性が問われる傾向は強まっています。
それは今年5月に発刊された「コーポレート・ガバナンス白書2019」(株式会社東京証券取引所発行)に掲載されている内容のもととなった「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」で調査項目として社外取締役の属性が聞かれるようになったことからも明らかです。

図表87 独立社外取締役の属性(全社)

図表87 独立社外取締役の属性(全社) 図表87 独立社外取締役の属性(全社)

(出所「コーポレート・ガバナンス白書2019」(株式会社東京証券取引所発行)P.87 ※調査対象は東証上場会社)

この結果について青木教授は「コーポレート・ガバナンスの仕組みが整って、やっと中身の議論というか━━ここからいかに実効性をもたせるかという段階にきていると感じられる」と話します。

SERVICE

SERVICE SERVICE

リクルートエグゼクティブエージェントは、株式会社リクルートの資本によるエグゼクティブサーチ・ヘッドハンティング企業です。

詳しくはこちら

CONSULTANT

CONSULTANT CONSULTANT

リクルートエグゼクティブエージェントには、担当業界を熟知した50名以上の経験豊かなコンサルタントが在籍しております。

詳しくはこちら

ページトップへ戻る ページトップへ戻る