2019年12月11日
日本国内における国際人的資源管理(グローバルHRマネジメント)研究の第一人者である早稲田大学政治経済学術院の白木三秀教授は、グローバルで展開する数多くの日本企業が抱える人事の課題について、まず「現地法人とのコミュニケーションがうまくいっていないこと」を挙げます。
一般社団法人 日本在外企業協会が実施した「日系企業における経営のグローバル化に関するアンケート調査(2018年調査)」によれば、海外現地法人における日本人社長比率は38%と、51%であった2年前の同調査の結果よりも大きく下回った一方、「外国籍社長を起用することについて、本社とのコミュニケーションが難しい」と答えた企業は53%に、「自社の経営理念の共有が難しい」と答えた企業は22%にのぼります。この結果は、日本人以外のトップが増えている海外現地法人に対して、コミュニケーション面で悩みを持つ日本企業が以前より低下したとはいえ、依然として多いということを如実に物語っているのです。
また「海外で採用した人材の流出」と「グローバル人材不足」という課題も、グローバルで展開する日本企業の多くが直面している課題だと白木教授。
前者については「日本企業は他国企業に比べて、労働者への処遇が低いことが影響していると考えられます。それは恐らく職能給制度が基準になっていて、勤続年数と共に徐々に賃金が上がる仕組みが根強く残っているからなのでしょう。また、日本本社から派遣されるマネージャーも、海外で採用されたマネージャーも、採用した人材に『ここでこう頑張れば、このポジションまで上がることができる』というキャリアパスを明確に示せないことも要因のひとつ。これはマネージャーが、そのようなことを伝えるための確固たる信念が持ちにくいことや、そのようなトレーニングを受けていないことが影響しています」(白木教授)
後者については「『グローバルに活躍できるような人材がいないので、育てることもできない』と悩む企業の声をよく聞きます。しかし、いないからこそ育てなければならないのです。つまり、育成する仕組みがないからグローバル人材が不足しているという状況を招いているのでしょう。また、日本企業では、グローバルタレントのほとんどは日本人というのが現実です。しかし、日本企業が国籍にこだわらずタレントを増やしたいと考えているのは確かです。当然、優秀な人材はグローバルを見渡した方が多いですから」
以上のような課題を解決する方法として、白木教授が挙げるのが、グローバルマネージャー育成の仕組みを強化すること。具体的には、グローバルトレーニングセンターなどの整備が考えられます。
「ネスレやGEなどのトレーニングセンターがよく知られていますが、本国のマネージャー候補や海外現地法人のトップマネジメントを集めて、企業の理念などを学んだり、そこに集まった人たちが顔見知りになったりして、会社のコアな部分がつながる仕組みを持つ海外のグローバル企業は少なくありません。そこでこのようなトレーニングセンターを持つことも、前述した日本企業が直面する課題を解決する方法のひとつだといえます」(白木教授)
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